Uber Eats、「傷害保障制度」を10月1日からスタート。個人事業主扱いのため労災保険が適用されない配達員に配慮。

「Uber Eats」は、人気レストランの料理を自宅まで届けてもらえるとして話題のフードデリバリーサービスです。当初は、このようなサービス自体に注目が集められていましたが、最近は、デリバリーを担う配達員の法的立場について議論がなされています。

すなわち、「Uber Eats」の運営主体たるUber Japanは、配達員との間で業務委託契約を締結し、個人事業主としての扱いをしているため、配達員については、労災保険の適用はなく、また労働時間規制(割増賃金の支払や時間外労働の上限規制など)を受けないことになります。そのため、例えば、配達中に事故に遭ったとしても、労災による保険給付を受けることができないことなどが問題点として指摘されています。配達員の働く環境を改善することを目的として「ウーバーイーツユニオン準備会」が結成され、10月3日に、労働組合の設立総会が行われるようであり、今後、より一層、議論が巻き起こるものと推測されます。

「Uber Eats」のような、仲介業者からインターネット等を通じて単発の仕事を受注する働き方及びこのような働き方によって成り立つ経済形態は、「ギグエコノミー」と呼ばれています。アメリカにおいては、このようなギグエコノミーに対する法規制(一定の条件を満たさない場合には、個人事業主ではなく労働者として分類する内容の法規制)の検討が進んでおり、カリフォルニア州ではすでに法案(通称「AB5」法案)が承認され、2020年1月から施行される予定です。

Uber Japanも、このような労働組合結成や海外における法規制等の動きを踏まえてか、配達中に事故に遭った場合について、医療見舞金、後遺障害見舞金、死亡見舞金、入院に伴う見舞金などを給付する制度として、「傷害補償制度」を10月1日から導入するようです。これにより、配達員にも補償がなされることになりますので、一定の保護は実現されます。もっとも、このような「傷害補償制度」で全損害をカバーしきれない可能性もあり、そのような場合には、カバーできていない損害分について、労働訴訟等で争われることになります。

注意をしなければいけないのは、当事者間で業務委託契約を締結して個人事業主扱いをしていたとしても、裁判所が、業務実態等を実質的に判断し、個人事業主ではなく労働者であると判断することもある、ということです。なお、「個人事業主の労働者性」については、過去の記事をご参照下さい。

「ギグエコノミー」のような個人事業主の利用は、人件費を抑えることができ、労働時間管理などの煩わしさから解放されるという意味において、使用者にとってのメリットもありますが、足元をすくわれてしまうリスクもありますので、注意が必要です。

【過去記事】
労働者の個人事業主化の労働法上の問題点~タニタの個人事業主制度は、何を批判されているのか?~

タイトルとURLをコピーしました