賃金債権等の消滅時効、2年から5年に変更される見込み

厚労省が設置している「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_503103.html)において、賃金債権等の2年の消滅時効(労基法115条)についての議論が行われており、民法改正によって短期消滅時効が廃止されることに合わせて、労基法も改正し、これを5年の消滅時効へと変更する方向で検討されています(令和元年7月1日に、検討会が取りまとめた「論点の整理」が公表されています。)。今後、検討会における議論をまとめた提言がなされ、労働政策審議会の審議を経て法改正につなげる方針のようです。
残業代請求との関係では、過去2年間分の労働時間についての主張立証に苦労することが多々あります。特に、使用者が客観的記録に基づいた労働時間管理をしていない場合、労働者側の過大な主張を覆すことができず、本来であれば支払う必要のない残業代を負担することになるケースがあります。
法改正によって消滅時効が5年に延長されてしまうと、過去5年間分の労働時間についての主張立証を行わざるを得なくなってしまい、使用者はこれまで以上に多大な労力を要することになります。また、主張立証が功を奏しなかった場合の残業代支払額も高額になってしまいます(2年間分の残業代だけでも200万円近いケースも珍しくないため、時効期間が5年に(すなわち、2.5倍に)なった場合、支払額が500万円(200万円×2.5)になってしまう可能性もあります。)。
今後、消滅時効期間について更なる検討がなされる予定ではありますが、法改正が行われる見込みは高いものと思われます。使用者としては、法改正が行われたとしてもこれに耐え得る労働時間管理及び記録保存を行っていくことが重要です。
なお、法改正が行われた場合、その適用については、経過措置が採られるようです。検討会においては、賃金等の債権の発生日を基準に考える方法(施行期日前に発生した債権については旧規定(2年)が適用され、施行期日後に発生した債権については新規定(5年)が適用される)が一例として挙げられています。

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