Q&A~計画年休導入時の時季変更権の行使の可否~

Q.当社では、8月中旬について事業場一斉の計画年休を導入しております。ただ、業務の都合で、計画年休取得日として指定した日に従業員に出勤をしてもらう必要が生じてしまいました。このような場合、年次有給休暇の時季変更権を行使して、別の日に年次有給休暇を取得してもらうことはできるのでしょうか。

1 回答
計画年休を導入している場合は年次有給休暇の時季変更権を行使することはできません。ただ、労使協定において、計画年休取得日を変更することがある旨の規定がある場合には、その規定にしたがって変更することが可能です。

2 理由
⑴ 計画年休制度について

計画年休制度は、労使協定を締結することにより、労働者の有する年次有給休暇のうち5日を超える部分について、あらかじめ計画をした時季に取得させることを可能とする制度です(労基法39条6項)。

この計画年休制度には次の3パターンがあります。

①事業全体による一斉付与方式

②班別の交代制付与方式

③個人別付与方式

ご質問の事業場は、パターン①ですが、この場合、例えば夏季や年末年始などの特定の時期(例えば、8月13日から8月15日までの3日間)について事業場の全労働者に年次有給休暇を取得させるということが可能です。

働き方改革関連法の施行に伴い、使用者に年次有給休暇の時季指定義務が課されたことを踏まえ、改めて計画年休制度の意義について、見直しが行われています。

⑵ 計画年休を導入している場合の時季変更権について

本来、年次有給休暇は、労働者が時季を指定してその取得を申請します。仮に、その時季に年次有給休暇を取得させると事業の正常な運営に支障を来すような場合には、使用者は、労働者が指定した時季以外の日に年次有給休暇を取得するよう、時季変更権を行使することができます(労基法39条5項)。

このような年次有給休暇の時季変更権を、計画年休を導入している場合の計画年休取得日に関しても行使できるのかがご質問内容ですが、行政通達(昭和63.3.14基発150号)において、「計画的付与の場合には、第39条第5項の時季指定権及び使用者の時季変更権はともに行使できない」とされている通り、時季変更権の行使はできないと考えられています。

そのため、仮に、計画年休取得日を変更する余地を残しておきたいということであれば、計画年休に関する労使協定において、その点の変更をする場合があり得ることを定めておく必要があります。

厚生労働省作成のリーフレットでは、以下のような規定例が示されています。

 「業務遂行上やむを得ない事由のため指定日に出勤を必要とするときは、会社は組合と協議の上、第1項に定める指定日を変更するものとする。」(厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」より抜粋(※1))

上記の規定例は、あくまで協議に基づいて変更するとの内容ですが、これとは別に、使用者に年次有給休暇の時季変更権を留保することを規定すること、すなわち協議を経ずに使用者が一方的に変更することも可能とする旨の規定とすることも考えられます。

ただ、労働者からすれば、計画年休取得日を前提に旅行等を予定している場合もありますので、仮に、そのような一方的に変更できる旨の規定をしたとしても、労働者側(労働組合又は従業員代表など)に説明をし、その意見を聴いた上で変更をするという手順を踏むべきであると考えます。

 

※1 厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」(https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

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