Q&A~新型コロナウイルス感染拡大防止のための休業措置とパートタイマーへの休業手当の支払~

Q.当社においては、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、パートタイマーについては就労を免除しており、その分の休業手当を支払おうと思っています。パートタイマーのような週の所定労働日数が正社員よりも少ない非正規社員に対する休業手当の計算は、どのようにしたら良いのでしょうか。

1 休業手当の支払の要否

労働基準法26条は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と定めています。この「使用者の責めに帰すべき事由」とは不可抗力によるもの以外は含まれると解釈されており、ご質問のような新型コロナウイルス感染拡大を踏まえた使用者判断による一時的休業の場合には、不可抗力とはいえませんので、休業手当の支払が必要です。

パートタイマーについても、当然、労働者に該当しますので、休業手当の支払は必要です(こちらについての詳細は、当事務所のリーガルノートをご参照いただけますと幸いです。)。

2 休業手当の支払額

 平均賃金の算出方法

上記の通り、休業手当の金額は、1日の平均賃金の6割以上とされています。
そこで、平均賃金の算出方法が問題になるのですが、こちらは、労働基準法12条において定められています。
以下では、平均賃金の原則的な算出方法と、月の所定労働日数が少ない場合を想定して最低額補償についてご説明します。

ア 原則的な算出方法

原則として、平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3箇月間に、その労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(これは、暦日であり、所定労働日ではありません。)で除して算出します。

 

例えば、4月6日から一時的な休業を開始するという場合、1月から3月に支払われた賃金が、以下の通りであれば、1日の平均賃金は、6593円(60万円÷91日。小数点以下は四捨五入しております。以下同様です。)となります。

暦日数 賃金
1月 31日 20万円
2月 29日 22万円
3月 31日 18万円
合計 91日 60万円


イ 例外(最低額補償)

日給制や時給制等の労働者(特に、週の労働日数が少ない労働者)の場合、上記の原則的な計算方法ですと、1日の平均賃金額が低額になってしまう可能性があるため、一定の最低額補償がなされます。すなわち、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60が最低額であり、上記原則的な方法による算出額がこれを下回る場合には、当該最低額が1日の平均賃金となります。

例えば、以下の例ですと、原則的な方法の場合は3516円(32万円÷91日)となりますが、最低額補償が7385円(32万円÷26日×0.6)となるため、この労働者の1日の平均賃金は7385円となります。

暦日数 所定労働日数 賃金
1月 31日 10日 13万円
2月 29日 7日 8万円
3月 31日 9日 11万円
合計 91日 26日 32万円

⑵ 日によって所定労働時間が異なる場合の休業手当の金額

上記の通り、労働基準法上の休業手当は、1日の平均賃金を算出し、その6割以上の金額ですので、1日単位で算定をします。これは、日ごとに所定労働時間が異なる労働者の場合であっても同じであり、支払うべき休業手当は、あくまで1日分です。
したがって、例えば、休業をする日の所定労働時間が4時間であっても、6時間であっても、支払うべき休業手当の金額は同一ですので、注意が必要です。

⑶ 残業代の扱いについて

休業手当を計算するにあたって、算定期間中に支払われた残業代を含めて計算すべきかというご質問を受けることもあります。
労働基準法12条に基づく計算をする際に、上記計算式における分子からは除外することができる賃金は、「臨時に支払われた賃金」及び「3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」などであり、残業代は除外されておりません。
そのため、残業代を含めた形で算出をする必要がありますので、この点は注意が必要です。

3 雇用調整助成金について
新型コロナウイルスの感染拡大防止のために休業をした、又は休業を予定している企業が増えている関係で、雇用調整助成金に特例措置が定められることが周知され(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html)、この受給に関するご相談が当事務所に多数寄せられています。
ただ、本日(4月5日)時点では、この特例措置の具体的内容は確定していないということに、注意をする必要があります。
また、このような状況ですので、今後、特例措置が拡大していく可能性もあるため、最新の情報は厚労省のHPや管轄のハローワークに確認をする必要があります。
なお、雇用調整助成金の支給を受けるためには、少なくとも事前に労使協定を締結した上で休業をさせる必要がありますので、この点はご留意下さい(もちろん、この点も、今後、特例措置が定められて緩和される可能性も、ゼロではありません。)。

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