年収1000万円超の管理職の管理監督者性否定(日産自動車事件)

日産自動車において、課長級の管理職(当時の年収は、1000万円超)の地位にあった男性従業員(当時42歳。在職中に、脳幹出血により死亡。)の妻が、未払残業代の支払を求めた事案で、横浜地裁は、当該男性従業員は管理監督者に該当しないと判断し、約350万円の未払残業代の支払を命じました(横浜地判平成31年3月26日)。

管理監督者は、労基法所定の法定時間外割増賃金及び法定休日割増賃金の支払対象から除外されますが(労基法41条2号)、管理監督者に該当するか否かを巡って争いになることが多々あります。管理監督者に該当するといえるためには、①経営者と一体的立場にあるといえること、②労働時間の管理について自由裁量が認められていること、③管理監督者にふさわしい待遇であること、のいずれも満たす必要があるとされています。

本件判決は、上記②及び③は満たすと判断したものの、上記①は満たさないため、管理監督者には該当しないと判断しています。これは、当該従業員が経営会議に参加することはあっても、上司の補佐をしているに過ぎず、発言をすることも予定されていないことから、経営意思に対する影響力が間接的にすぎないことなどが理由のようです。

一般的には「管理職=管理監督者」というイメージがあるように思いますが、裁判例上は、管理監督者と認められるハードルは極めて高いといえます。単に、管理職であるからという単純な理由で、管理監督者として扱ってしまっている使用者も多いかと思います。未払残業代請求において管理監督者性が否定された場合、もともとの賃金額が高いため賃金単価が高額となってしまうこと、また、管理監督者として扱っていたために労働時間が長時間に及んでしまっていること(又は、労働時間の管理を使用者が行っていないために、労働者側の主張に対する反論の証拠がなく、結果的に長時間労働が認定されてしまう可能性もあります。)から、未払残業代の金額が極めて高額になってしまうことがあります。使用者としては、このような法的リスクを踏まえ、この点の見直しをすることをお勧め致します。

なお、本判決においては、管理監督者として扱っていたことについて相応の理由があるとして、付加金(※1)の支払までは命じられておらず、使用者側反論の参考になる裁判例といえます。

 

 

※1 付加金

解雇予告手当、休業手当、法定時間外・深夜・法定休日割増賃金、年次有給休暇を取得した場合の賃金を支払わなかった使用者に対する制裁として、裁判所が支払を命じる金員をいいます(労基法114条)。例えば、ある労働者に対する法定時間外割増賃金の未払額が100万円である場合、付加金としても同額の100万円の支払が命じられ、使用者は、合計で200万円もの金銭支払義務を負うことがあります。

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